問題解決でなく、解決構築へVol.0
世の中は、問題解決思考で溢れています。
実際、問題解決思考は日常生活やビジネスにおいて有効です。
しかし、複雑化した現在社会においては問題解決思考だけでは、問題解決をする事はできません。
複雑化した社会とは、問題の原因が複数あり、それらが複雑に絡み合っている社会のことです。
そうした社会では、一つの原因を解決したとしても逆にその事によって別の問題が生まれるような自体が起こるため、従来の問題解決思考だけでは、問題を解決することが出来ないからです。
また、問題解決思考の功罪として一番に感じていることとしては、その便利さ故に問題解決思考を機械や事業計画と同様に、「人」や「人の心」にも当てはめて考えてしまうことです。
「人」や「人の心」は、機械や事業計画のように問題解決思考だけでは解決できません。むしろ、問題解決思考の「問題」やその「原因」を一方的に一般化する捉え方が、あらゆる争いやいじめ、パワハラなどのハラスメントといった問題を引き起こしていると考えています。
そして、ビジネスにおいては事業計画を進める上で、複雑なパズルのピースを埋めていくがごとくに問題を捉えている方も多く見受けられます。
しかし実際には、そこで働く「人の心」をどう動かすか、あるいは、自分達のサービスによってお客様の「心」にどう感動を与えるかがビジネスにおいても大切です。
にも関わらず、問題解決思考が世の中において強調されすぎていることに疑問を感じる人々が、私を含め増えています。
理性的な発想は、時間がどのくらい短縮できたか、費用がどのくらい抑えられたかといった、明文化できる便利さを生み出すことが出来ます。
しかし、心によって感じる明文化できない「感動」や「希望」「勇気」「愛」といったモノは理性的な発想からだけでは創り出すことはできません。
本シリーズ企画「問題解決でなく、解決構築へ」は、上記の考えについて、整理、体系化すると共に、問題解決思考の代替となりうる解決構築思考について理解を深めることを目的に以下の著書の要点をまとめていきます。
解決思考アプローチの第一人者であるピーター・ディヤングPeter De Jongとインスー・キム・バーグInsoo Kim Berg著の「解決のための面接技法 ソリューション・フォーカストアプローチの手引き第4版 Interviewing for Solutions 4th Edition
ただし、私は問題解決思考を全面的に否定しているわけでもしたいわけでもなく、全てを問題解決アプローチに当てはめて考えることの危険性を述べているのです。
よって、本連載は基本的には解決構築アプローチについての内容が主となるため、Vol.0では問題解決思考についてどう有効で、どのように生活やビジネスにおいて役立っているのかについてまとめ、解決構築アプローチとの比較をする下地を作りたいと思います。
問題解決アプローチがどのように日常生活やビジネスにおいて活用されているのかについて、実例で考えていきたい思います。
例えば車のエンジンがかからない問題を解決するには
(1)車のエンジンがかからない(現状の把握)
(2)スロットルを回す事を何度が試す、ガソリンの残りを確認する、ボンネットを開けてクーラント液を確認する(原因の確認)
(3)原因がガス欠だと分かる(原因の特定)
(4)近くのガソリンスタンドまで車を押すか、給油缶にガソリンを入れて給油するか、JAFを呼ぶか考える(解決策の検討)
(5)近くのガソリンスタンドがあったため、給油缶をガソリンスタンドの人に借りる交渉をして借り、ガソリンスタンドまでのガソリンを確保した。(解決策の実行)
という思考で考えれば、慌てずに最適解を導き出せます。
ビジネスであれば、上記(3)以降の原因の特定、より良い解決策の検討とその実行がクライエントだけではできない(あるいは非効率)ため、専門家として専門知識やスキルを用いてクライエントの問題を解決するわけです。
上記の例で言えば、
(i)エンジンがかからない。
(ii)クライエントはで問題の原因を確認したが、原因が特定できなかった。その為、JAF(専門家)を呼んだ。
(iii)JAFの方は専門知識を使い、エンジンやその他の機器を調べたところ、部品に欠損があることが分かる。
(iv)スペアパーツの用意があったため、クライエントにパーツ代金と修理費用が追加で掛かる事について了承を得る。
(v)パーツの交換をし、エンジンがかかるよう修理した。
上記の通り、問題解決アプローチは社会において有効に機能している点について認識しつつ、代替となりうる「解決構築アプローチ」について、私自身も本連載を進める中で理解を深めていきたいと思います。