井川ヒロトのブログ

志について探求を続ける 井川 ヒロト が、ニュース・社会・政治・教育・作品(映画、演劇、インプロ、音楽、本、DVD、TV番組・ラジオ)などについて思った事を綴ります。※記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属団体の公式見解ではありません。

富士通ファン故に、日本の栄枯盛衰を見る

前回の記事で私は、

クリエイティビティと、きちんとやることは、相反する面があって、どれだけクリエイティビティを受容できるか(=社員の価値を引き出せるか)が企業価値になっていっている」と述べた。

そして、その価値観を受容できない企業は淘汰されていくとも。

 

 

来て見て触って、 富士通のお店

 

 

その例として、誠に残念ながら、富士通株式会社があげられるのではないかと思う。

 

私の父は富士通を定年まで務めあげた人で、だから私は小さいころから、富士通の製品に囲まれて育った。

ウィンドウズがこの世の中に存在する前から、いわゆる「ウィンドウシステム」を搭載したFM-TOWNSが周りにあり、PCを使っていたし、冷蔵庫、エアコンなど家電製品もほとんど富士通製品、旅行先は父の富士通社員の同僚家族とキャンプに行ったり、スキーに行ったり、富士通の保養所に行ったりといった具合だ。

 

なんでこんなことを書いているかというと、私は富士通が大好きだという事をまず伝えておきたいから。

 

ただ、私が富士通のことを褒めることはまれで、文句を言うことの方が多い。

これは、野球やサッカーのサポーターが、応援しているクラブチームに対して厳しい激励を飛ばす感覚に似ているのだと思う。

 

 

もちろん、私は富士通で働いたことがないので、あくまで外野からものを言っているにすぎないのだが、今の富士通には、クリエイティビティを受容し、活かそうとする姿勢や風土があまり見られない。

 

例えば、最近では、ニフティ売却のニュースである。

富士通ニフティを売却へ 会員減少で業績低迷(朝日新聞デジタル) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140410-00000006-asahi-bus_all

 

ニフティといえば、パソコン通信の時代からある、インターネットサービスプロバイダの老舗だ。この歴史と富士通の持っている資源があれば、絶対新たなビジネスチャンスを創り出すことはできたと思う。

日本のネットの歴史を支えてきたニフティが、ここまで堕ちてしまったことは残念でならない。

 

 

私が採用コンサルタントをしていた時に、富士通会社説明会を見学させていただいたことがあった。その際に、富士通の伝説の社員、池田敏雄さんの紹介をしていた。(池田敏雄さんについては富士通のウェブサイトに載っているので、詳しくはこちらを参照して欲しい。)

 

彼は天才技術者で、富士通のコンピュータ事業の礎を築いた人である。彼がコンピュータ開発を行っていた昭和20年代(1940~50年代)は、世界的にもまだ計算機などのコンピュータは珍しい時代だ。世界中の人が探り探りの状態の中、IBMなどの大企業と対抗できる機器の開発を日本で行う事は並大抵のことではない。

 

池田さんは、天才肌故に、新しいアイデアが浮かぶと何日も自宅にこもって出社しないなど型破りな面もあった。しかし、当時の富士通は、後輩、先輩、上司、経営者みんなで彼を支え、組織として新たな技術を創造していった。

現に彼は、47歳の若さで取締役にまでなっている。

 

富士通の創世記にはそういうクリエイティビティを尊重する風土があったのだ。そして、少なくとも数年前までは、会社説明会でもその逸話を紹介していた。

 

 

にも関わらず、最近の富士通からはクリエイティビティを感じることが難しい。

 

プラズマディスプレイだって、世界で初めて技術化できたのは富士通だ。それなのに、普及がうまくいかず、今やほぼ全てのテレビやモニターが液晶になってしまった。

 

 

昨今、クリエイティビティの重要性に気が付いている人や組織はたくさんいて、その意識改革をしていくノウハウはたくさんある。私の周りにだって溢れている。

 

 

できるか、できないかじゃない。やるか、やらないかだ。

 

 

池田敏雄さんの逸話に触れると、彼はいつでもそうやって突き進んでいったんだって思う。

 

 

今の富士通はどうか。

 

変われないのか?

 

変わらないのか?

 

変わるんだ。

 

 

変わる方向は、すでに社史にある。クリエイティビティの尊重だ。

僕は今も応援している。

 

 

片瀬 京子 (著), 田島 篤 (著), 野中郁次郎 (解説)「挑む力 世界一を獲った富士通の流儀( 日経BP社)」

 

城 繁幸著「内側から見た富士通成果主義」の崩壊( 光文社)」