井川ヒロトのブログ

志について探求を続ける 井川 ヒロト が、ニュース・社会・政治・教育・作品(映画、演劇、インプロ、音楽、本、DVD、TV番組・ラジオ)などについて思った事を綴ります。※記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属団体の公式見解ではありません。

推薦入試は受験生にとって良い選択か?

メリークリスマス!

今年はサンタさんが、通常よりも若干空いている通勤電車をプレゼントしてくれました(笑

今日は大学入学者がどういった入試方式で受験をしたかのデータを見ていきたいと思います。

平成26年度一般入試

平成26年度AO・推薦入試

文部科学省平成26年度国交私立大学入学者選抜実施状況」より

【注目データ】

・大学入学者数599,234名のうち、一般入試での入学者数は339,414名で全体の56.6%%

一般入試の志願者数は前年と比べ、5万人以上の大幅増の3,517,321名

・AO(アドミッション・オフィス)入試での入学者数は51,362名で全体の8.6%

AO入試の志願者数は前年と比べ、3413名減の97,689名

・推薦入試での入学者数は205,849名で全体の34.3%

推薦入試の志願者数は前年と比べ、9208名増の422,274名

【読み取れること】

その1:一般入試受験者の増加

個人的には、AO入試などの学力試験を伴わない受験が増えていると聴いていたため、一般入試志願者の大幅増は驚きです。

18歳人口は増えていないため、恐らく一人当たりの出願数が増えたのだと思います。つまり併願で複数の大学や学部を受験する受験生が増えたということです。

考えられる要因は2つです。

①景気が良くなり、複数校の受験を増やす保護者が増えた

出願には1回辺り25000円~30000円程度掛かります。4回出願をしたら10万円を超えるわけです。おまけにその後めでたく合格し、入学先の大学が見つかれば、入学手続き費用が掛かるわけで。不況になればなるほど、出願回数はできる限り少なくして欲しいと望む保護者は増えるでしょうし、その逆もまた然りです。

②併願割引を実施する大学が増えた

自分で書いておきながらなんですが、個人的には①よりも②の要因の方が大きいのではないかと感じます。

併願割引とは、同じ大学で複数の学部に受験をする際に、受験料の割引を行うもので、最近は志願者数の増加を狙い、多くの大学で実施されています。

例えば、A大学の文学部を受験する受験生の受験料が30000円だとして、その受験生が同じA大学の経済学部を受験する場合、通常は30000円×2学部の60000円が掛かりますが、同時出願をすれば10000円割引にするといったイメージです。

明治大学の入試併願割引制度を見てみましょう。

一学部出願 35,000円

だだし、全学部統一入試入学試験において、複数学部を出願する場合に限り、2学部目以降の入学検定料が20,000円となります。

( 全学部統一入試入学試験のみで法学部と商学部を出願する場合の入学検定料は、35,000円+20,000円=55,000円になります。)

(明治大学入試総合サイト)より

最近は同時出願をすれば、1学部の受験料だけで、複数の学部を受験できる制度を行う大学もみられ、受験生にとっては、「同じ受験料であれば一応他の学部も受けておくか」と考え、結果として志願者の延べ数が増えるという仕組みです。

その2:.AO入試受験者の減少と、推薦入試受験者の増加

推薦入試の志願者数は平成24年度が396,352人、平成25年度が413,066人、平成26年度が422,274名と年々増え続けています。

AO入試の志願者が減った要因は、恐らくより確実に合格を狙える推薦入試を目指す受験生が増えたためであると思われます。

推薦入試が増えた要因として考えられることは次の2つです。

①大学数の増加

以前の記事で書きましたが、大学の数はここ10年間で70校ほど増えています。それぞれの大学、学部ごとに推薦を各高校に出しますので、大学数や額部数が増えれば、当然推薦の総量も増え、推薦入試を利用できる受験生が増えます。

②推薦枠の拡大

1大学あるいは、1つの学部が高校等の学校へ出す推薦枠の数が増えている可能性です。

どういうことかというと

i.これまで推薦枠の対象としていなかった高校を対象とする。

ii.1校に付き1枠の推薦枠を2枠に増やす。

iii.推薦基準を引き下げる(例えばこれまで評定4.0の推薦基準を3.8にするなど)。

などの方法で推薦対象者を増やし、結果として推薦入試を利用できる受験生が増えた可能性です。

ただ、もしこの記事を受験生の方が読んでいるのなら、お願いしたいことは、推薦入試を受験勉強をしなくて済む選択肢として捉えないで欲しいということです。

なぜなら、「楽ができる」という要素に、ご自身キャリア選択の目的が支配されてしまうからです。

たとえ上手くいかなかったとしても、仕組みに選ばされた選択ではなく、自分で導く選択を続けてください。

自身を見つめ、やりたいことを見つけ、そのために歩みを進める経験は、イノベーションが求められる21世紀では必ず役に立ちます。

誰かが決めた人生についていく、誰かが灯した明かりについていけば上手くいく20世紀の時代は終わりました。

上辺の戯言ではなく、ご自身の言葉に真剣に耳を傾けてくれる人と対話をして、ご自身が踏み出すべき方向性を探ってください。

ああ、つい抽象的な言葉ばかりを並べてしまいました(汗

ええと、では最後に、大学マイスターの倉部史記さんのセミナーで伺った、とある大学の入試アドバイザーの方と受験生のやりとりで締めたいと思います。

※思い出しながらなので、若干言葉やニュアンスには違いがあるかもしれません。

受験生:私、看護師になりたくて、こちらの大学の看護学科に進学したいんです。ただ、私は勉強が苦手なので、私の高校がちょうどこちらの大学の推薦枠をいただいているので、推薦で受験をしたいと思っています。

入試アドバイザー:もし、あなたが勉強がしたくないという理由で推薦入試を考えているのなら、悪いことは言わない、あなたは看護師に向いていないから、やめたほうがいい。

受験生:えっなぜですか?

入試アドバイザー:看護師っていうのは、看護師になるまでにもたくさんの勉強が必要だが、なってからも、様々な病気や怪我を抱えてくる患者さんに答えるために日々勉強をし続けなければならない。看護師という仕事は見かけ以上に大変なことが多い仕事で、だから努力を続けられる人じゃないと続けることができない。

だからもしあなたが勉強をしたくないという理由で、受験勉強から逃げようとしているなら、私は看護師に向いていないと思うんだけれど、どう思う?

受験生の女の子は、この言葉を聞いて大変ショックを受けた様子で大学を後にしたようですが、その後思い直して勉強をし、無事にその大学に入学できたそうです。

例え選んだ道は同じだったとしても、誰かが照らしている道ではなく、彼女は彼女自身で照らした明かりで進みました。

小さくても良いので、志という心の明かりを灯しましょう。

そうしたら、暗闇だって怖くないですから。

ではでは今日はここまでです。

ではでは。

看板学部と看板倒れ学部 - 大学教育は玉石混交 (中公新書ラクレ)  倉部 史記 (著)

文学部がなくなる日 主婦の友社 倉部 史記 (著)