池上彰のやさしい経済学 第一回 金は天下の回り物
昨年BSジャパンで池上彰のやさしい経済学という番組が放送された。
池上彰「池上彰のやさしい経済学―1 しくみがわかる(日本経済新聞出版社)」
非常に興味深かったが、残念ながら私の家ではBSが観られないため、1回あたり2時間(講義は90分)、14回連載の番組だが、実家で録画してもらった。
それをやっと少し最初の数回観ることができたため、その講義メモを書いておきたい。
その前に講義全体の感想を言うと、やはり非常に分かりやすい講義展開で、私が経営情報学部時代に4年間かけて身に着けた経済学的視点を、わずか1時間30分でその大部分を説明されてしまった感じ・・・
面白いのは、経済学部の学生に対する講義ではなく、京都造形芸術大学という芸大の学生に講義をしている点。
池上さんの「経済を理解することは、世の中や人間理解をすること」という理念から、あえて芸大生に講義をしたんだろうなと思った。
それに、門外漢の学生に教えるからこそ、かみ砕いて物事を伝えることのプロである、池上さんが講義をするという価値があるのだと思う。
以下、講義メモ。
池上彰のやさしい経済学 第1回 金は天下の回り物
Economicを経世済民、理財という中国の言葉で訳そうとして、経済という言葉が生まれた。
経済学とは資源の最適配分を考える学問。
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あらゆる資源は限られている(石油、鉄、時間、人、カネ)
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それをどう配分すれば良いかを考える学問が経済学
→資源が無限にあれば、経済学はいらないが、資源は有限である。
社会主義:一握りのエリートが配分の方法を考え、その計画通りに資源配分を行う
資本主義:資源の配分をマーケットに委ねる。
・マルクス経済学
<経済学とは選択の学問である>
資源の希少性が世の中にあるから。→石油や鉄が無限にあれば、配分を考える必要はない
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限られた、採掘された鉄で船を作るか、自動車を作るかを選択する必要がある。
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もし船をその鉄で作ろうとすれば、他のものをその鉄で作るという選択肢を捨てるということ。
→例えば授業に出るという選択をするということは、家で寝ている、デートをする、映画に行くという機会を捨てているということ。
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機会費用(機会損失)という考え方。
<モノの値段の決まり方>
需要と供給のバランスによって、モノの値段が決まる。
(トウキョウフォレックス上田ハーロー=トウフォレ上田→円とドルなど外貨の仲買人→需要と供給の象徴的なもの)
市場(いちば)と市場(しじょう)
いちば:いちばは物の現物をやり取りする場
しじょう:現物がその場にないもののやりとりを表す場
・その値段で買う人がいるからその値段になる。
・合理的経済人がいることを前提に、経済学は作られている。
合理的経済人とは、安くて良いものと、高くて同じものがあった場合、安いものを買う人。
→しかし実際は不合理な行動をとる人が市場には存在する。
例えば、3000円と5000円の商品を並べた場合、3000円の商品の方が多く買われる。しかし、3000円、5000円、10000円の商品を並べると、5000円の商品が一番多く買われるということが実際には起こる。
水とダイヤモンドはどちらが貴重なのだろうか?
Qなぜ、高級ホテルのコーヒーは1000円以上の高い値段なの?
A高級ホテルの雰囲気を楽しみながら高いお金を払ってもコーヒーを楽しみたいと思う人がいるから。
需給ギャップがあると経済がうまく回らない→不況になる。
政府の政策としては、需要を増やす(公共政策などで雇用を増やし、給与として支払いお金を使ってもらう)、もしくは供給を減らす(会社が供給を減らすためにやめてもらう従業員に失業保険を払う)を行い、需給ギャップを少なくする。
<景気が良いとは?>
景気とは気分によるところが大きい。
景気動向指数の項目
<先行系列>12項目
新規求人数、新規住宅着工床面積、耐久消費財出荷指数(家電や自動車)など
<一致系列>11項目
大口電力使用量、所定外労働時間指数、商業販売額
(景気が悪くなると、服は紳士物が一番最初に削られる。次に子供、その次に婦人物。
逆に景気が良くなると、婦人物が最初に売れ、子供服、次に紳士物が売れる)
<遅行系列>6項目
家計消費支出、完全失業率など
完全失業率の考え方
全人口から、15歳以下、学生、専業主婦、病人、老人の人数を引き、その中で働きたいのに一か月間1時間も働いていない人の比率が完全失業率。
労働人口=全人口―(15歳以下+学生+専業主婦+病人+老人)つまり労働人口
GDPとは、企業が付けた付加価値の合計。
GDPの昨年と比較した伸び率を「経済成長率」という。
<買い物とは投票行為である>
→良いサービスのお店を選ぶとそうしたお店が増え、サービスの悪いお店は淘汰される。
良い商品だけれど少し高い商品、悪いけれど安い商品があり、良い商品を選べば、世の中に良い商品が残る。
だから、買い物をするときには、よくよく考えて行ってほしい。
出演: 池上彰, 大江麻理子, 長谷川京子, 峰竜太, 麻木久仁子(ポニーキャニオン)
「池上彰の戦争を考える~戦争はなぜ始まりどう終わるのか~」