イガワヒロトのブログ

志について探求を続けるイガワヒロトが、いつまでも青臭い心(ブルーハーツ)でニュース・社会・政治・教育・作品(映画、演劇、インプロ、音楽、本、DVD、TV番組・ラジオなど)の批評や日常の思った事を青っちろい言葉で記事にします。※記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属団体の公式見解ではありません。

元大学職員が語る裏口入学の話

東京医大は「裏口入学リスト」を作成して、入試の点数に加点をするといった不正入試をしていたことが問題となっています。

また、その対象者には文部科学省の局長が関わっていて、私学助成金の認定と引き換えに息子を合格するように依頼をしていたことも、この件の大きなポイントです。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

この問題に関して、少なくとも私の周りの教育関係者からの意見はほどんど語られていません。それは日大の問題もしかりですが、大学に関わらず、教育関係者はこうした問題についてもっと発言をして、自らを律するべきだと思いますし、そうした状況の中ででも発言している教育機関こそ、ほんとうに信頼できる教育機関だと思います。

 

今は教育機関から距離を置いている立場の人間として考えを述べてみたいと思います。

 

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結論から言うと、文部科学省側の人間が、補助金をニンジンにして個人的あるいは組織的な利益を得ることは許されることではありません。

一方、そのニンジンに食いついて不正入試を行った東京医科大が行ったことは良くありませんが、コネ入学自体については現在も一般に行われていることであり、それを不公平でずるいと感じる人はいるかもしれませんが、一定の範囲で行う分には認められるのではないかと思っています。

 

本件の内容について、この問題を形成している私学助成金の背景や、入試運営の実情なども含めて元大学職員の私が(ざっくりですが)解説します。

 

私学助成金の背景】

私学助成金は簡単に言えば、私立大学に対する国からの補助金で一般補助と特別補助に分かれています。

もともとは学生数や教員数等の条件に応じて分配する一般補助がほとんどでしたが、最近では一般補助金の割合を減らして、教育研究に関する特色ある取り組みに応じて配分する特別補助の割合が増やされているというのが昨今の状況です。

平成 29 年度 私立大学等経常費補助金交付状況の概要http://www.shigaku.go.jp/files/s_hojo_h29.pdf

 

これは、文科省側から、大学の教育改革を進めよというメッセージなわけですが、要するに、文科省が望むような方向性に補助金をぶら下げて大学を導こうとしているんだなと大学職員時代に私は感じていました。

まあ、一般企業と比べて大学の危機感や変革のスピードが遅いのは確かなので、助成金をいわばニンジンにしてでも改革を促さないと、国際的な高等教育競争に立ち遅れてしまうという文科省の認識もあったのかなとも思います。

 

私学助成金の背景の話しに戻ると、流れとしては小泉政権時代の所謂「聖域なき構造改革」という掛け声のもとに、大学にも競争を促そうという流れの一つで補助金文科省が認める活動をした大学に対して多く支給するという傾斜配分をする事になりました。

また、大学を新しく作る際の大学設置認可基準もゆるくなったため、新しい大学や学部が多くできるようになりました。そして批判の多い名前を聞いても良くわからない学部名が乱立したわけです。

 

私学助成金を餌につかうこと罪】

国の補助金助成金には、あらかじめ想定された支給先がいる(支給先に意見を求めながら補助金助成金の仕組みを作る)ことはよく言われていることですが、それでも市場の原理による競争を促している文部科学省の幹部が平等な競争の原理を台無しにするようなことを行ったことの罪は重いです。

極端に考えれば、平等な競争の原理を逸脱して、補助金を得た大学があれば、限られた予算の中でもらえない大学も出てくるわけです。また、ブランディング事業が実施できなかったために競争に負け、潰れる大学が出てきてしまった場合にどうやって責任を取るのでしょうか。

公正な入試や教育を行うよう指導すべき立場の人間がこうした犯罪を行うことの罪も重いです。こうしたことの一つ一つが教育機関全体の倫理観を引き下げることに繋がるからです。

 

実際に今回の事件でも出てきたようなコンサル会社がはびこったり、文科省の役人が天下り先として大学教職員になっている例も多くありますが、個人的にはこうした実情も、高等教育機関の倫理観を損なうことに繋がることを危惧しています。

文科省出身の教職員がいる大学は、その人数を公表すべきだと思います。

 

【大学関係者からみた不正入試の内情】

先ほど少し日大の問題について触れましたが、東京医科大学の入試担当職員は日大アメフト部のタックルをした学生と同じ気持ちだったのではないかと思います。

 

不正入学を指示したのは前理事長と前学長ですが、入学手続きというものは理事長と学長のみでは行うことはできません。

一般的な一般入試の試験後の手続きはざっくりいうと、

①採点担当教員が採点

②職員が取りまとめて合格ラインを検討するリストを作成する

③入試委員会にて合格ラインと合格者を合議で決定する

④教授会にて承認

⑤合格発表

 

といった流れです。恐らくですが、上記の流れでいうと、前理事長と学長は②と③に関与して、入試担当職員(恐らく入試部長級)と入試委員長へ指示をして、点数の操作を行ったのだと思われます。

 

大学関係者以外の方には、理事長と学長の違いが分かりにくいかもしれませんが、理事長は学校法人の経営を担う者で、学長が教育内容を決定する者です。

どのような教育をすべきかやどういった教員を採用して、教員の人事を決めるのは学長ですが、基本的に予算を握っているのは理事長です。

そのどちらの責任者からも指示があった場合に、大学という閉じられた世界の中で、それを拒否することは非常に難しいと思います。

 

【コネ入学の是非】

一般入試という制度の中で、特定の者のみに不正に得点を操作して合格をさせることは許されないことですが、一方でコネクションを利用して入学をすることの是非は賛否が分かれるところだと思いますし、必ずしも悪だとは言い切れないと思います。

 

例えば今回文科省の政策局長が、補助金事業の申請書の書き方を指導した音声が流れていますが、推薦入試やAO入試では、公式に入試対策講座と称して受かるためのコツを教えている大学も多くありますし、非公式に特定の高校や予備校の生徒に対して指導をすることも行われています。

 

また推薦入試やAO入試では、ペーパーテストと違って評価は面接官次第ですので、やろうと思えば特定の生徒に対して合格にすることも可能です。

 

ですので、文科省が特定の大学に補助金の便宜を図ることは明らかにいけない行為だと思いますが、東京医科大側としては、もしどうしても特定の生徒を合格させたかったのだとすると、推薦やAO入試を用意するか、一般入試でその生徒のラインまで合格ラインを引き下げるくらいのことをすれば、少なくとも入試不正には当たらなかったのだと思います。

 

米国ではコネや寄付金を多く積む人を優先的に入学させることは多くあることはよく聴くことです。コネというと悪いイメージがあるかもしれませんが、日本でも親や兄弟がいる子どもを優先して合格させる学校は多くありますが、それも言ってみればコネです。また企業へコネクションを通じて入社するコネ入社も一般的に行われていることです。

 

要するに個人的な見解としてはコネ入学をすること自体が悪なのではなく、コネ入学を認めるのであれば、事前にあらかじめそれを受け入れられる制度を設けて行えば、少なくとも私立大学については問題ないというのが私の見解です。

 

いかがでしょうか、今回の問題の背景について少しでも理解が深まりましたら幸いです。

 

 

速解 大学教職員の基礎知識〈平成26年改訂版〉

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消える大学 残る大学―全入時代の生き残り戦略

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