井川ヒロトのブログ

志について探求を続ける 井川 ヒロト が、ニュース・社会・政治・教育・作品(映画、演劇、インプロ、音楽、本、DVD、TV番組・ラジオ)などについて思った事を綴ります。※記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属団体の公式見解ではありません。

問題解決でなく、解決構築へVol.6(例外の探究)

本シリーズ企画「問題解決でなく、解決構築へ」は、問題解決思考だけでは解決が困難な現在における様々な問題に対する代替となりうる「解決構築思考」について理解を深めることを目的に、以下の著書の要点をまとめていきます。

なお、この連載で取り上げるのはあくまで要点のみであり、原書にはその事例やより詳しい説明が書かれているため、正確な理解のためには原書をご確認いただきますようお願いいたします。

※本シリーズ企画の目的についての詳細はVol.0をご覧ください。

 

解決思考アプローチの第一人者であるピーター・ディヤングPeter De Jongとインスー・キム・バーグInsoo Kim Berg著の「解決のための面接技法 ソリューション・フォーカストアプローチの手引き第4版 Interviewing for Solutions 4th Edition

 

 

第6章 例外の探究~クライアントの長所と成功体験をもとにした解決構築~

 

よいことに焦点を合わせるとよい日になり、悪いことに焦点を合わせると悪い日になる。

問題に焦点を合わせるならば問題は増え、解決策に焦点を合わせるならば解決策が増える。

Alcoholics Anonymous, 1976, p.451)

 

水の入ったコップ

 

 

例外とは、クライアントの生活の中で当然問題が起こると思われるときに、どういうわけかそうならなかった過去の経験を指します(de Shazer, 1985)。

例えば、不平を言って皿洗いを手伝おうとしない子どもが、最初の5分間は不平を言った後に、いくらかでも皿を洗ったとしたら、それが例外です。

 

 

まさに、何度か例で挙げている、水の入ったコップの内、水の入っていない方(問題)を見るのではなく、(たとえ量は少なかったとしても)入っている水の方を見るという感覚です。

 

 

具体的にできる質問としては「ここ2,3週間のうちに問題が起きなかったり少しましだったりしましたか」と聞くことができます。「2,3週間」や「最近」の話を聞くことで、クライアントは詳しく思い出すことができたり、また起こりそうだと思うことができます。

 

 

もしクライアントが例外に気づいたならば、その例外が問題の時とどのように違うのかに特に注意して尋ねます。

 

問題解決思考の面接者はクライアントの「問題」について誰が、何を、いつ、どこでという事を探っていくのに対し、解決構築思考の面接者は例外について誰が、何を、いつ、どこでということを探っていきます。

 

 

その際、クライアントがその例外が起きた理由を述べることができたらそれは「意図的な例外」であり、たまたまの偶然だといったとしたら「偶然の例外」です。

 

「意図的な例外」であれば、クライアントが抱えている問題を、その例外を広げていくことで改善できるヒントがあるかもしれないため、そこに注目していきます。

 

 

また、例外を探していく中で、クライアントの長所と成功体験を見つかることが多いため、例えクライアントが例外を過小評価したとしても、その例外を聞き逃さず、言い換えて肯定する(褒めるのではなく例外としてできている事実を認める)ことは、クライアントに自身の可能性を感じてもらうために有効です。

 

 

この章のポイント

●繰り返し例外を探す質問を尋ねる習慣をつけること

 

●クライアントが例外を過小評価しても、その例外を聞き逃さないこと

 

●例外の時が問題の時とどう違っているかを尋ねること

 

●例外を起こすために誰が何をしているかを見つけること

 

●例外に示されたクライアントの長所と成功を強調して言い換え、肯定すること