就活後ろ倒しの学生への影響は?
文部科学省から、「大学等における学生の就職・採用活動に関する調査について」が発表されましたので、今日はそのご案内です。
以前の記事で詳しく触れていますが、2016年3月卒業予定の学年(2015年1月時点では大学3年生)の学年から、就職・採用時期が3ヶ月ほど後ろ倒しになります。
それを受けての大学及び企業側に対し、その対応状況についてアンケートをしたものです。
本日は大学側への調査について、その要点を見ていきたいと思います。
《平成27年3月卒業・終了予定者の就職活動の状況について》
○ 学生の就職活動期間については、前年との比較で約8割が「あまり変化はない」と回答。
○ 企業の広報活動及び採用選考活動については、いずれも前年との比較において「あまり変化はない」との回答が最も多かったが、採用選考活動においては「早まっている」との回答が約3割を占めた。
○ 内々定の時期については「あまり変化はない」の55.8%に対して、「早まっている」との回答が36.9%に達した。
○ キャリアカウンセラーを配置し、学生等への就職相談を実施している大学等の割合は65.8%となっている。また、配置した大学等の92.7%が「効果あり」と回答。
○ 企業の協力を得て行うキャリア教育としての学内セミナーについては、82.7%の大学等が既に実施しているか、又は今後の実施予定があると回答。
○ インターンシップの強化・充実等については、61.7%の大学等が、既に行っている又は行う予定があると回答。
(文部科学省ウェブサイト「学生の就職・採用に関する調査について平成26年12月1日」より)
まず、この調査の前提をお伝えすると、調査実施期間は2014年7月14日(月)から7月29日(火)であり、対象者は就職・採用時期後ろ倒しの1年前の学年に対する調査であるということです。
調査の主旨は何かというと、恐らくは2013年6月に「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」にて閣議決定された、就職・採用活動後ろ倒しから1年経ち、対象学年の年ではないが、各大学・企業の対応状況について確認をしたいということだと思います。
調査の結果から見えてくる、全体的な傾向としては「あまり変化がない」という意見が占めているが、一部「早まっている」と感じている傾向もあるといったところだと思います。
この「早まっている」と考える大学がいることの一番の理由は、調査結果にもある「インターンシップ」の企業側の位置づけの変化が主な原因であると考えます。
以前の記事で触れたとおり、企業が就職ナビを使って広報活動をする時期が、3ヶ月程度後ろ倒しになりました。
その期間を補い、かつ政府方針に反しないための企業側の策として、インターンシップがあります。
どういうことかというと、インターンシップというと、以前は2週間~1ヶ月程度企業に行き、仕事体験をするものをさしていましたが、今は「1Dayインターンシップ」など、超短期の「インターンシップ」と名乗るイベントを開催する企業が出てきています。
この超短期インターンシップとは、実質は企業説明会と何が違うのでしょうか?
もちろん、その企業で働いた場合の簡単な体験をその中でするのかもしれませんが、本質的には「職業体験」にはなりませんよね。
企業ではそのようにして、就活生への広報活動を行いますし、大学側も採ってもらう側としてはその状況に対応せざるを得ないという状況なのだと思います。
というかこの状況は恐らく、就職ナビや合同企業説明会等を運営する採用媒体社が主導していると思われます。
なぜなら、インターンシップを受け付けるための就職ナビや合同企業説明会が売れるからです。
とはいえ、私個人としては、たとえ1Dayだろうが超短期だろうが、3年生の夏の時期から「インターンシップ」と名のつくイベントへ、学生が足を運ぶこと自体は悪いことだとは思いません。
インターンシップも期間が長期化傾向にあるようですが、夏休み期間に限っていれば、学生の研究活動にも影響は少ないですし、学生とだけ触れ合っているよりははるかに社会や企業や働くということについて深く触れることができるからです。
私の2014/10/11付けのエントリーではインターンシップ参加学生がわずか2.2%しかいないことに触れました。
文部科学省がまとめた、「学事暦の多様化とギャップイヤーを活用した学外学修プログラムの推進に向けて」(意見のまとめ)(P.57)によると、確かに10年前と比べてインターンシップ。参加学生数は増えてはいるが、それでも学生数辺りの参加率は、平成13年度が0.9%だったのに対し、平成23年度は2.2%に増えたにすぎない。
この数字はやや偏ったデータであると思いますが、大目に見ても10%~30%程度の参加率ではないでしょうか。
逆に言えば伸びしろがまだあるということです。
キャリアデザインをしていくうえでの前提となる、「自己理解」を深めるためには、これまでとは違った場、人、環境に身を置いてみることが役立ちます。
これまでとは違った視点からの自身へのレスポンスを受けることで、ジョハリの窓でいうところの、「自分には見えていないが、他人には見えている部分」の発見につながり、「自分も他人も見えている部分」を大きくすることができるからです。
それと最後に、キャリアカウンセラーとしては、「○ キャリアカウンセラーを配置し、学生等への就職相談を実施している大学等の割合は65.8%となっている。また、配置した大学等の92.7%が「効果あり」と回答。」という調査結果はとても嬉しいですね。
全国各地で活躍されているキャリアカウンセラーの方々の頑張りが、こうした結果に表れているということですから。
ではでは今日はこのへんで。
ではでは。
就活「後ろ倒し」の衝撃: 「リクナビ」登場以来、最大の変化が始まった 曽和 利光 (著) 東洋経済新報社