プレジデントの記事で損保ジャパン日本興亜HD社長櫻田謙悟氏(岡村繁雄=構成 市来朋久=撮影)の「なぜダイバーシティで企業は成長できるのか」という記事がありました。
ダイバーシティには以前から興味があり、このブログでも触れた事があり、上記記事を読んでみたので感想を書きます。
私としては、この記事の内容について共感はできませんでした。
もちろんダイバーシティを推進するという方針自体は素晴らしいことだと思いますし、そのことは私も同意権なのですが、ダイバーシティを推進する意図とその方法について、この記事の触れ方はズレていると思ったからです。
もしこの記事を読んでダイバーシティを理解してしまう人がいたのなら、単に女性や外国人比率を上げることがダイバーシティと勘違いしてしまうのではないかと危惧するからです。
いや、恐らくは記事の編集の仕方に違和感を覚えているのだと思います。
これだけ積極的にダイバーシティを推進させたいと考えている企業の社長であれば、そこに思想があるはずですし、インタビューでもそういった話しはしているはずです。
しかし、この記事からはそういった思想がほとんど見えず、べき論と、施策と、目標しか述べられていません。
恐らく文字数の都合で編集されたのだと思います(そう信じてます)。
具体的な記事の内容を見ていきたいと思います。
まず、タイトルの問い「なぜダイバーシティで企業は成長できるのか」への答えは、恐らく以下の記事のまとめの文であると思われます。
これからは多様性を活力にするグループ全体のダイナミックな配置・処遇を通じた企業の競争力の向上が求められる。それこそが真の「Diversity for Growth」だと考えている。
ここまでは私も同意権です。そして、ダイバーシティの推進が企業のイノベーションにつながり、結果として企業の競争力の強化に繋がるということは以前の記事で述べましたのでここでは割愛します。
ただ、その中身はというと、
・日本では女性の活躍のみならず外国人の活用にも積極的に取り組んでいる
・女性の役員、管理職登用には数値目標を持つべき
・女性管理職育成のための独自プログラムを用意
・女性を中心とした営業店を開店
・女性を特別扱いしない
・高齢者の活躍も考えるべき
といったことしか枝葉のことしか触れられていません。
しかし、ダイバーシティの本質は、企業の文化やそこにいる人の意識改革です。
これまで当たり前と思っていたこと、「こうするべき」と考えられてきたこと、これまでの成功法則、そういったこれまでの常識や価値観という殻を破り、自分(あるいは自分達)以外の常識や価値観に耳を傾けて理解する能力のことです。
男性が多い職場に女性比率を高めることや、外国人を登用するなどの異なる常識や価値観を持った人物を登用することは、方法論であって、その目的ではないわけです。
だから極端に言えば、現在のように価値観が多様化した社会では、別に同姓同士でも、日本人同士であってもダイバーシティは必要ですし、成り立つわけです。
上記の通りこの記事では、「女性管理職育成のための独自プログラムを用意」「女性を中心とした営業店を開店」といった施策が取り上げられています。
この施策自体は別に間違っているとは思いませんが、その視点に立てば、ダイバーシティを社内に導入するに当たり、女性向けの研修や女性だけを集めたグループを作ることがその本質でないことはお分かりいただけるのではないでしょうか。
むしろ、研修やセミナーを実施して、意識改革を図るべきなのは、女性社員ではなく男性社員(特に管理職)であるわけです。
これまでとは違う価値観や常識を持った人間を受け入れる側(女性に対しては男性だし、外国人に対しては日本人だし、若者に対しては中高年)にこそ、その意味や具体的手法を教育するべきなのです。
(いや、恐らくこの会社だってそういうことに全く取り組んでいないわけではないと思うのですが、記事の中で取り上げられていないがために、ダイバーシティについて誤った印象が伝わってしまうことが残念です)
では、ダイバーシティを推進するに当たり、どういった教育をしていけばよいのか。
一つお示しをしようと思ったのですが、長くなりましたのでまたの機会にしたいと思います。
ではでは今日はこの辺で。
ではでは。
多様性を活かすダイバーシティ経営 基礎編 荒金 雅子 (著) 日本規格協会
PRESIDENT (プレジデント) 2015年 1/12号 プレジデント社