井川ヒロトのブログ

志について探求を続ける 井川 ヒロト が、ニュース・社会・政治・教育・作品(映画、演劇、インプロ、音楽、本、DVD、TV番組・ラジオ)などについて思った事を綴ります。※記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属団体の公式見解ではありません。

なぜ、センター試験を廃止するのか

大学入試センター試験廃止案を、文部科学省の諮問機関である中央教育審議会が、下村博文(ちなみにお名前は「はくぶん」と読みます)文部科学大臣へ提出したとニュースになりました。

 

 

大学入試改革全体像

中央教育審議会新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)(中教審第177号)」より

 

 

■テレ朝ニュース「センター試験廃止案 文科省審議会が大臣に答申

文科省の審議会は、これまで実践的な学力を身に付けるため、暗記に偏りがちな現行の入試制度からの脱却を目指して議論を進めてきました。

審議会は22日、マークシート方式の大学入試センター試験を廃止し、代わりに「学力評価テスト」を導入するよう下村大臣に答申しました。

テストには、新たに記述式の問題や複数の教科にわたる問題を盛り込み、思考力や判断力を問うなどとしています。

センター試験は年に1度の実施でしたが、複数回の実施を検討しています。文科省は、2020年度の実施を目指し、今後、具体的な制度案をまとめるとしていますが、膨大な量の記述式問題の採点をどうするかなどの課題があります。

 

答申の内容を簡単にまとめたものが、上に掲載した図です。

 

簡単に言うと、センター試験に代えて、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を設けようというものです。

 

この答申案の背景について、あんまりきちんと説明された報道が少ないようなので、まずはそこを抑えたいと思います。

●背景①:大学生の学力低下

以前の記事で、前回の記事で、18歳人口の減少と、進学率の上昇についてと、大学数の上昇についてを書きましたが、そのお陰で、高校生にとっては競争倍率が減り、大学へ進学しやすくなりました。

 

また、AO入試や推薦入試などの広がりで、事実上学力を問われずに大学へ進学できる高校生が増え、大学生の学力低下が問題視されるようになりました。

 

●背景②:イノベーションが求められる時代にあった教育の必要性

グローバル化多角化が進む中、これからはイノベーションを起こしていくことが求められていると、以前の記事でも書きました。

従来型の知識量のみを問う試験によって序列が作られる社会で育った人材では、与えられた課題に答える能力の向上ははかられたとしても、「主体性を持って他者を説得し、多様な人々と主体性を持って他者を説得し、多様な人々と協働して新しいことをゼロから立ち上げることのできる、社会の現場を先導するイノベーションの力を、大学において身に付けることは難しい(中教審答申より抜粋)。」そのため、思考力、判断力、表現力を評価する仕組みを考える必要があると考えられるようになりました。

 

 

こうした背景を受け、

 

・高校までに最低限身に着けるべき学習の達成度を把握するための、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」

 

・大学入学希望者が、これからの大学教育を活用方策の達成度の把握及び自らの学力を客観的受けるために必要な能力について把握するための「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」

 

が検討されたということです。

 

個人的には、背景①で述べた「大学生の学力低下」に関しては、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は、高校生で身に着けるべき最低限の学力の達成度を確認するための試験として位置づけるのであれば、高校の卒業用件にしてしまえば解決しそうとか思ったりしますが。

 

ただ、現案では「高等学校基礎学力テスト(仮称)」も参加希望型となっていて、全員強制で受けるものではないみたいなので、なかなか反対意見などが合って難しいんでしょうね。

 

 

また、さまざまな課題も示されています。

 

NHK時論公論 「大学入試改革 実現性は?」

 

 

知識偏重から知識の活用力を評価する入試へという理念は理解できますが、複数の試験を受けなければいけなくなるだけではないかという疑念も生じかねません。本当にこんなテストができるのか。残された課題の中から2点あげたいと思います。

 

(中略)

 

・一口で、「知識や技能を活用する思考力・判断力・表現力を評価する」と言っても、簡単なことではありません。そうした新しい学力をどのような試験で測るのか。どのような方法で評価していくのか。具体策は示されていません。

 

(中略)

 

・答申案は、大学ごとに行う個別試験では、様々な物差しで学生を丁寧に多面的に評価することを求めました。ただ、アメリカの大学は、入試専門のスタッフがいて入学希望者と対話を繰り返して入学者を決めていますが、日本の大学には、このような体制は整っていません。志願者数が数万人という大学で、どこまでこうした入試ができるのか。個別入試の制度設計や適正な評価ができる人材をどう確保し、育成するか。

 

 

6年後というと今の小学校5、6年生からの実施になります。

 

子ども達に少しでも良い教育環境を与えたいという親や教師にとっては、子どもに勉強の方向性を示してあげる期間としては長いようで意外と短いのかもしれませんね。

 

 

 

 

時間と学費をムダにしない大学選び2015 - 最辛大学ガイド 石渡 嶺司 (著), 山内 太地 (著) 中央公論新社

 

 

大学の選び方 2015 (週刊朝日ムック) 朝日新聞出版