池上彰のやさしい経済学 第四回 マルクス経済学~資本主義は失業者を生み出す
昨年BSジャパンで池上彰のやさしい経済学という番組が放送された。
池上 彰「「見えざる手」が経済を動かす (筑摩書房・ちくまプリマー新書)」
非常に興味深かったが、残念ながら私の家ではBSが観られないため、1回あたり2時間(講義は90分)、14回連載の番組だが、実家で録画してもらった。
それをやっと少し最初の数回観ることができたため、その講義メモを書いておきたい。
以下、講義メモ。
池上彰のやさしい経済学 第4回 マルクス経済学~資本主義は失業者を生み出す
(第3回は録画できなかったため、第4回)
ドイツ生まれ。ベルリン大学にて父は弁護士だったため、弁護士になろうとしたが、哲学の道に進むことになった。共産運動を起こし、やがてロンドンへ亡命し、そこで「資本論」を書き上げた。
正社員は、人件費となる。しかし
派遣労働者の費用は物件費となる。つまり、えんぴつ等のモノと同じ扱いをされている。
労働価値説・・・労働があらゆる価値を生み出すという考え方。これは、アダム・スミスの考え方と同じ。
<資本家と労働者>
資本家は会社を潰さないようにするために、他社とくらべて勝つため、労働者を搾取するようになる。
→労働者と資本家の戦いが起こる。
<資本論のはじまり>
資本主義の世の中では、あらゆるものに値段がついている。商品があらゆるものの基礎となっているため、商品についての研究から始める。
Q愛はお金で買えるのか?
A同じくらい素敵な男性がいた場合、一人は貧乏でいつも食事はファーストフード、一人はお金持ちでいつも高級レストランに連れて行ってくれる。
その時に、お金の多い少ないが、自分の心のなかの思いに影響は与えないだろうか。
<商品の二つの価値>
・使用価値・・・使って役に立つ価値。鉛筆であれば、字や絵を描くことができる価値。
・交換価値・・・交換をする時の価値。交換価値は、使用価値があるからこそ生まれる。
例えば鉛筆2本と消しゴム一つを交換するならば、消しゴムには鉛筆の2倍の交換価値がある。
これは、消しゴム一つを作る間に、鉛筆2つを作れるという考え方。
消しゴム一つには、鉛筆2本分の労働価値が含まれていると考えられる。労働力の多さによって、その価値が変わる。
<資本家とは>
お金を持っている人。しかし、ただ持っている人は、財産家。
もっているお金、財産を増やそうと新たな事業や仕事をする人の事を、経済学では資本家と呼ぶ。
<資本家と労働者の関係>
労働者としては、その会社に就職するかどうかは労働者の自由。その会社で働く以上、その会社の給与など労働条件に納得して働いているということ。企業と労働者は対等な立場で契約を交わし、働く。
工場が原材料のコットンを買うときは、コットンを作る労働力の対価を払う。資本家が労働者を雇うときは、労働力の対価を労働者に支払う。
そこから生み出された資本家が取る利潤(利益)はどこから生み出されたか?
マルクスは、労働者が労働によって生み出したと考えた。
労働者が9時~17時まで働き、次の日来た時にまた元気になっている状態の事を「労働力の再生産」という。その労働力の再生産にかかる費用を労働力の再生産費という。
↓
→仕事をする→遊ぶ→食事をとる→睡眠をとる→仕事をする
↓
労働者の賃金=労働力の再生産費と考えた。
■このように、労働力を手に入れることによって、労働者が生み出した利潤を手に入れることによって資本を生み出し、資本を大きくしていくことを資本家はしていると考えた。つまり労働者に給与を働かせ、働かせた以上の利益を手にする。
↓
マルクスはこれを、資本家が労働者を搾取していると考えた。
労働によって生み出す価値には、必要労働と剰余労働がある。剰余労働は資本家に利益をもたらす労働。
この剰余労働を資本家が増やす方法として、以下の方法がある。
1.残業をさせ、剰余労働を増やす(絶対的剰余価値を増やす)
2.必要労働時間を減らす。(機械化による効率化)
3.必要労働時間も剰余労働時間も変えないが、労働力の再生産費を下げる環境を作り出し、給与を下げる。
→そのために、機械化によって必要な労働力の数を減らし(失業者を増やす)、社会に労働者を余らせることによって、安い給与(再生産費が低くても)でも働くという契約を資本家とする労働者を増やす。
その結果、資本家による資本の蓄積と、労働者による窮乏の蓄積状態が生まれる。
その結果、資本家によって与えられた労働の中で組織化の能力にたけた労働者が、やがて資本家の資本を奪い取る。
■このマルクスの思想に共鳴した世界中の人々が共産党を組織し、社会主義国を作り出す。
ウラジーミル・レーニンによるソ連。
レーニンに共鳴した毛沢東による中国は農村を中心にした理想社会を作り出そうとした。
景気循環が上手くいかず、供給過多になり、不況→恐慌がたびたび起こっていた。
そうした状況を変えるべく、資本論は世界中で支持された。
全て計画された経済の下では、どの様な商品であっても、計画通りに消費がされるため、より良い製品の開発は行われなくなり、やがて国民の不満は高まる。
紙製の車トラバント。排気ガス規制もないので、すごい排気ガスを出す。(東ドイツ製)
↓1963年8月に建設されたベルリンの壁
1989年11月10日ベルリンの壁崩壊
ところが、リーマンショック以降、世界恐慌が起き、派遣切りが増え、失業者が増えた。マルクスの思想通りの結果になった。
<中国の社会主義市場経済>
アダムスミスの自由な経済を社会主義に導入した。
1980年にシンセンを初の経済特区に指定した。(他を含め4県)
社会主義は現実にある制度
共産主義は理想
池上彰「池上彰の学べるニュース〈7〉アベノミクスTPP編(海竜社)」