【読書】スポーツマンシップ立国論 〜今求められる人材育成戦略〜
レバレッジメモより、スポーツマンシップ立国論 〜今求められる人材育成戦略〜
広瀬 一郎「スポーツマンシップ立国論 ~今求められる人材育成戦略~(小学館)」
今年行われたロンドンオリンピックでは、様々なスポーツマンシップを考えさせられる出来事が起こった。
日本選手のメダルラッシュ、男子柔道での金メダルゼロ、韓国サッカー男子五輪代表の朴鍾佑選手は日本との試合後に竹島領有権を示すプラカードを掲げた問題、韓国2組・中国・インドネシアの女子ダブルスバトミントン無気力試合、なでしこジャパンサッカーのフェアプレーぶりと誤審ともとれる審判を尊重する佐々木監督の対応など。
こちらの本は、スポーツの指導に当たっている人や、スポーツをしている人はもちろん、将来やりたいことと今の自分の間に溝を感じていて、その溝をどう埋めていけばよいか思い悩んでいる人にもお勧めです。
著者は、多摩大学の教授で、ワールドカップやトヨタカップなどサッカーを中心とした団体スポーツのイベントを多数プロデュース、2002年の日韓ワールドカップの招致委員も務められた広瀬一郎先生です。
広瀬先生は、著書の内容もとても面白いですが、実際にお話を伺うと、さまざまな経験談の宝庫でとても面白く役に立つお話を伺うことができます。
以下、いくつか心に響いた言葉をご紹介します。
・アリストテレスは、道徳は技術と同じようにトレーニングで見につけるものだと言っている。道徳とは「何が正しいか」を判断するだけではなく「正しいと思う事を実践する能力」のこと。
・そうした何が正しいかを判断する判断力と、正しいと思う事を実践する力をはぐくむにはスポーツが最適。
・問題解決のスタートは現状の把握
・目標に対してなぜそれを目標にするのかという答えを持っていることは、達成した時の自分をイメージできていることを意味する。
・尊重とは「上下関係がない、同等であって、立場が異なるモノを理解し、認めること」
・共同体は同室を前提にし、社会は異質を前提に成立している。
・ルールに記載されていなくても守らなくてはいけないこと、前提になっていること、これを前提という。
・目標設定をするだけでなく、その目標を達成した自分、について具体的なイメージを持つことが重要。
・競技をする目的は、勝利を収めること。そして勝利とは、ルールによって初めて規定される。スポーツをすることは、ルールによって規定され、意味をもった特定の身体活動に参加すること。ゲームは本質的にルールによって管理された身体活動であり、そこには「参加者全員がルールに従って活動する」という暗黙の了解ができている。相手がいるから勝ちを収めることが可能なように、ルールがあってはじめてプレーが可能になり、勝利が決まる。したがって、ルールを破っても勝ちたいと思う事は、その勝つ意味・価値を成立させている根底条件を否定することになり、その勝利自体に意味がなくなってしまう事を示している。
・カフーは「これから向かうゲームに置いて、私たちの相手が最高のパフォーマンスを見せ、私たちもそれに全力で立ち向かい、最高のゲームになるよう全員で祈ろう」と言った。そのセリフはリスペクトの表現以外の何物でもない。
・自分が参加しているスポーツを尊重するなら、勝つために何でもするというのではなく、そのスポーツを成立させているルールという枠組みの中で、全力を尽くすべきと教えることが指導者のもとも重要な役割。
などなど、他にも素晴らしいことがいっぱい書かれています。
広瀬 一郎「サッカービジネスの基礎知識―「Jリーグ」の経営戦略とマネジメント(東邦出版)」