千と千尋の神隠しから考える「ゆとり教育」反対への反対意見その3
私は学力の面でも「ゆとり教育」に罪の全てを着せることはできないと思う。
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確かに、最近の大学生は理系でも分数の計算ができない学生がいたり、大学の授業についていけない学生が増えてきたという話しはよく聞くし、事実であると思う。そして、ゆとり教育による授業時間の削減もその一因であると思う。
しかし、大学生の学力低下にはゆとり教育よりも大きな理由がある。
それは18歳人口の減少と進学率の増加である。
まずは下記のデータを見てほしい。
(出典:文部科学省「学校基本調査報告書」、総務省統計局「人口統計」)
18歳人口はピークの昭和41年の249万人と比べると、平成22年では半分以下の122万人になっている。
そしてこの減少率と反比例して大学・短大への進学率は上がっており、昭和41年当時は約20%程度であった進学率が、平成22年では56.8%にまで増えている。
つまり大学入学資格(及び大卒の価値)のデフレの状態に今はなっており、昭和40年代では大学に入学することができなかった、あるいはしなかった学力層も大学入学を考え、入学をすることができるようになったため、大学生全体の学力が下がっているのである。
そしてそれは高校も同じである。
さらに言うならば、ゆとり教育の誤認の件から少々離れるが、最近は「不況で大学生の就職内定率が下がっている」と言われているが、私はその認識も誤りであると感じている。
企業の採用ハードルは、好景気のころと比べれば多少は上がっているだろうが、大局的には内定率の下落水準ほど上がっているわけではない。
そうではなく、学力的にも、大学での学びや活動意欲にしても低い大学生が増え、これまでとほとんど変わらない企業の採用ハードルを超えることが出来ない学生が増えたと捉える方が、事の本質に近いと思う。
大手企業の外国人採用が増えてきているが、それもビジネスのグローバル化だけに要因を当てはめるのでは、本質からは近くない。
日本人学生だけでは優秀な人材の確保が難しいと早々と気付いた大手企業が、仕方がないから外国人にも積極採用をする領域を広げたと捉える方が正しいのではないかと思う。
話しを元に戻すと、つまり、
ゆとり世代と言われる者の平均学力レベルの低下の主要因は、進学率の上昇であって、ゆとり教育ではない。
ゆとり教育が学力低下に全く影響がないとは言わないが、その主要因ではない。
近年はマスコミのみならず、橋本大阪市長(大阪威信の会会長)[ツイッター記事]など、政治家もメディアでゆとり教育批判を繰り返している。
誤った事実認識では、誤った決定しか下すことは出来ない。
私は政治家などの政策決定者がこの様な認識で、誤った政策決定が行われてしまうことを危惧する。
また、ゆとり教育批判を通して自己正当化をし、大人達が反省をせずに下の世代へ誤った教育を繰り返し、日本人の成長の機会を逃すことを危惧する。
そして断言する。「ゆとり教育批判」は、子ども達に明るい未来は残さない。
(第4回に続けることにした)
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急遽第4回を作り、4回連載とする事にした。
第4回では、今後の教育のあるべき姿について、研究途中の為、まとめきれているわけではないものの、その考えについて触れ、この記事を締めたい。
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監督: 宮崎駿(ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント)
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