井川ヒロトのブログ

志について探求を続ける 井川 ヒロト が、ニュース・社会・政治・教育・作品(映画、演劇、インプロ、音楽、本、DVD、TV番組・ラジオ)などについて思った事を綴ります。※記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属団体の公式見解ではありません。

【芝居】パラドックス定数「インテレクチュアル・マスターベーション」

(2009-03-30はてなダイアリーブログ掲載記事を加筆修正)

パラドックス定数インテレクチュアルマスターベーション

劇団パラドックス定数 第18項「インテレクチュアル・マスターベーション

劇場:下北沢にあるシアター711

日露戦争後に社会主義を掲げ、平民社日本社会党にて活動をした大杉栄幸徳秋水堺利彦、木下尚江、山川均、荒畑寒村内山愚童

彼等は本を出版することを禁じられ、集会を開くことを禁じられ、演説の一切を禁じられた。

本を出版したり、論文を書いたり、考えを発表したり、こうしてブログを書いたりしたことがある人ならば、表現者ならば、その政府の弾圧という横暴は彼らにとってはある意味「死ね」と言っているのと同義であると理解できるのではないだろうか。

これは彼等が彼等の自由をつかむため、奔走する姿を描いた作品。

日本社会党の行ったことについては共感しかねるが、私が学生時代にオーストラリアに1年間留学した時に開花させた「当たり前と思っている常識を一度疑ってみる」というアナキズムとは繋がるところがあるのかもしれない。

彼等は私に問いかける。

君は、自由か。

私にはまだ○○主義といったものはできていない。仮にあったとしても、この場でそれを表現することははばかられるだろう。

それは、誰かに何かの規制を受けているわけではなく、社会からの重圧があるからである。

権威主義がまだ根強いこの国では、権威も経験も何も持ち合わせていない私なぞはいとも簡単に排除されるのだろうし。

だからこそ、私がこの作品を観て感動したことは、彼等が「今」この作品を上演してくれたということその事自体にであった。

この国にまだ確かに存在する、マイノリティや反体制に対する「出る杭を打つ」体質。それを客入れ出し時に流れていたTheBlueHearts(ザ・ブルーハーツ)のアナーキーな曲とともに、表現者らしく、表現してくれていたから。

彼等はいつも、いつまでも僕に問いかけてくれる。

君は、自由か。

作品で気になったことと言えば、女性の姿が描かれていなかったこと。

シド・アンド・ナンシー」でいうナンシーの様な女性はいなかったのだろうか。

監督: アレックス・コックス 出演: ゲイリー・オールドマン, クロエ・ウェッブ, アンドリュー・スコフィールド, イギー・ポップ, コートニー・ラブ

シド・アンド・ナンシー [DVD]」

パラドックス定数公式サイト

「インテレクチュアル・マスターベーション」特設サイト

※注)音が出ます。

断わっておくと、パラドックス定数という劇団は何も社会主義を掲げている劇団ではない。

ただ、その劇団名が示すとおり、3億円事件やグリコ・森永事件、731部隊東京裁判などの史実を元に個人と社会の相克(パラドックス)を描いた作品創りに取り組んでいる。